(1)本態性高血圧症患者と正常血圧患者のDNAを材料に用いて、P450(11β)遺伝子のエクソンをPCR-SSCP法によって比較解析した結果を「国際副腎と血圧調節ワークショップ」において発表し、その概要がモノグラフとして出版された。ヒトのこの遺伝子はエクソン5、6、7にそれぞれ多型性が存在するが、血圧異常症との相関は認められなかった。 (2)副腎皮質の球状層細胞の機能はアルドステロンなどのミネラロコルチコイドの分泌を通じて血圧調節に密接に関わるが、この組織に特異的に発現する新たな遺伝子を見いだし、その遺伝子産物をZOG(zona glomerulosa-specific protein)と名付けた。cDNAの構造解析の結果、ZOGは細胞膜-回貫通性タンパク質であり、細胞外領域にEGF反復領域を持っている。そしてショウジョウバエの神経組織の分化に関わるNotch-Deltaファミリーに属するタンパク質であることなどが分かった。これらのことからZOGは球状層細胞の発生と分化に関わることが予想される。従ってこのタンパク質の発現調節と血圧を含めた循環生理機能の調節との関連が今後の研究課題として注目される。 (3)体液の電解質レベルの上昇によって誘導される新規タンパク質を見いだし、現在、高塩食負荷ラットのcDNAライブラリーからこのタンパク質遺伝子をクローニングしているところである。
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