研究概要 |
本研究では、コリン燐脂質代謝とプロテイン・キナーゼC活性化の共役機構を解析する目的で、コリン燐脂質代謝において中心的役割を演ずる酵素であるホスホリパーゼDの活性調節機構の解析に焦点を絞り研究を行った。前年度は無細胞系に於ける哺乳類のホスホリパーゼDの活性測定法を確率したが、平成8年度は科学研究費補助金による最終年度であることを鑑み、我々が確率したホスホリパーゼDの活性測定法を用いて、酵素活性に影響を及ぼす因子の同定、並びにこれらの因子存在下でのホスホリパーゼDの活性調節機構を酵素学的に解析した。ホスホリパーゼDは細胞膜結合型蛋白質であり、その酵素活性発現には、細胞質の可溶性画分に存在するG蛋白質、更にG蛋白質以外の蛋白質が酵素の活性化に関与することを示す実験的根拠を得た。この因子は分子量36kの熱安定性を示す蛋白質であり、組織分布が酵素のそれと一致することから、ホスホリパーゼDの生理的な活性化因子である可能性が強く示唆された。また、エタノールアミン燐脂質がホスホリパーゼDの活性発現に必須であることを証明し、ホスホリパーゼDの活性化蛋白質因子のみならず燐脂質を含む大きな構造体が関与することを明らかにした。燐酸化を介した箔性調節機構,細胞骨格系とホスホリパーゼDの関連など未解決の問題があるものの、分子レベルでのホスホリパーゼD活性調節のメカニズム解明に大きく前進したと言えよう。
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