研究概要 |
ホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)とジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)の二つのリン脂質合成酵素について検討した。PAPについては、表面膜結合性の2型酵素が35kDaの糖蛋白質であることを確定し、初めてcDNAクローニングを行った(甲斐等JBC,271,18931,-96)。現在2種類のヒト2型PAPをクローン化してa,bと命名した(未発表)。両者とも6回膜を貫通し、N-,C-端ともに細胞内に配向する新規分子であるが、他研究室の結果よりPAP2aはDrosophilaの生殖細胞移動を制御するwunen(Nature 385,64,-97)のホモログであり、さらにPAP-2bはラット小腸粘膜細胞分化時に誘導されるDri遺伝子(JBC,271,29928,-96)と同じものであることが分かった。本研究の予想外の結果により、PAPが細胞の発生、分化などに直接関与していることが明らかとなった。 DGKに関してはアイソザイムのcDNAクローニングが進行し、我々によるδ型(坂根等、JBC,271,8394,-96)のほか、他研究室による報告を加えて8種類のアイソザイムの存在が明らかになった。DGK分子種はそれぞれ特徴ある制御部位を持っており、その役割について今後検討する必要がある。我々はDGKの触媒部位を決定し(坂根等,BJ,318,583,-96)、さらに3種のDGKに存在するEF-ハンドのカルシウム結合活性を比較検討した(山田等BJ,321,59,-97)。またDGKαのリンパ球活性化時の核マトリックスへの移行を初めて報告した(和田等FEBS Lett.393,48,-96)。DGKαに関するスペインのグループとの共同研究が完成した(JBC271,10334,-96)。
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