消化管粘膜における神経・内分泌系と免疫系のクロストロークとその病態に関する研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457045
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 名倉 宏 東北大学, 医学部, 教授 (90022821)
• 研究分担者: 千葉 敏雄 東北大学, 医学部, 講師 (20171944) ; 佐々木 巌 東北大学, 医学部, 助教授 (60125557) ; 笹野 公伸 東北大学, 医学部, 助手 (50187142) ; 大谷 明夫 東北大学, 医学部, 助手 (30133987) ; 木村 伯子 東北大学, 医学部, 助教授 (80142975)
• キーワード: 粘膜免疫 / VIP / VIP受容体 / アトピー性皮膚炎 / 潰瘍性大腸炎 / 先天性胆道閉鎖症 / IL-6 / マクロファージ

研究概要

本研究は消化管粘膜のおける免疫系と神経・内分泌系との相互制御機構とその破錠に基づく消化管病変の病因病態の解明に関する研究を、本年度は以下の2つの腫瘍研究項目を設定し実行した。
(1)免疫系と神経・内分泌系の発生分化とその異常に基づく小児・新生児疾患の病因病態に関する研究を実施した。
(2)免疫系と神経・内分泌系の相互制御機構の粘膜組織における解析とその異常に関する研究を炎症性腸疾患を中心に展開した。
健常の新生児および成人間では消化管粘膜のVIP含有神経線維の分布にはほとんど差はなかったが、そのmRNAは成人腸管内分泌細胞にも確認された。VIP受容体は、IgA形質細胞の出現と一致して生後2ヵ月以内の乳児ならびに成人の粘膜固有層Nφやパイエル板濾胞樹状細胞に発現していたが、アトピー性皮膚炎はじめ食物アレルギーが示唆される小児の腸管ではVIP含有神経の分布に異常はなくても、VIP受容体の発現は遅延していた。逆に先天性胆道閉鎖症では門脈域での神経線維分布の減少、欠損が観察された。また潰瘍性大腸等で炎症病態が進展し、組織破壊に伴うとVIP神経は激減、消失していた。
分離Mφーリンパ球では、サイトカインのうち形質細胞への分化を司るIL-6産生がVIPにより選択的に制御され、それもMφの活性化の程度によって影響されることが明らかとなった。このように消化器における免疫系の神経・内分泌系の異常がさまざまな消化管粘膜はじめ消化器系の異常を惹起させることがわかった。
これらの研究成果は、第8回国際粘膜免疫学会のPlenary Sessionでも招待講演として発表され、高い評価を受けた。

研究成果

• [文献書誌] 太田達郎 他: "Henoch-Schonlein紫斑病における消化管病変の免疫組織化学的研究" 消化管と免疫. 31. 101-110 (1995)
• [文献書誌] Sasano Hironobu rt al.: "4d4BP in the human adrenal cortex in its disorders." J Clin Endocrinol Metab. 80. 2378-2380 (1995)
• [文献書誌] Kimura Noriko et al.: "Immunohistochemical localization of chromostatin and pancreastatin,chromogranin A-derived bioactive peptides,in normal and neoplastic neuroendocrine tissues." Endocrine Pathology. 6. 35-43 (1995)
• [文献書誌] Takayuki Mizoi et al.: "Intercellular adhesion molecule-l expression by macrophages in human gastrointestinal carcinoma:Possible roles as hoes immune/inflammatory reaction." Pathology International. 45. 565-572 (1995)
• [文献書誌] Ohtani Haruo et al.: "Similarities of in situ mRNA expression between gelatinase A (MMP-2)and type I procollagen in human gastrointestinal carcinoma:Comparison with granulation tissue reaction." Jpn J Cancer Res. 86. 833-839 (1995)
• [文献書誌] Kimura Noriko et al.: "Expression of prohormone convertase,PC2,in adrenocorticotropin-producing thymic carcinoid with elevated plasma corticotropin-releasing hormone." J Clin Endocrinol Metab. 81. 390-395 (1996)
• [文献書誌] 名倉 宏: "現代病理学体系(1)(分担)" 中山書店, 311 (1995)
• [文献書誌] Nagura Hiroshi: "Essentials of Mucosal Immunology(分担)" Academic Press(in press), (1996)