まず、100例を越える膵癌患者に由来する癌組織を収集した。これらの病理組織切片を調べ、正常細胞の混入が50%以下のもの52症例を選び、その癌部と健常部の組織からDNAを抽出した。ひきつづき、全染色体領域にわたりマイクロサテライトマーカーのPCR法による染色体欠失を検索した。その結果、合計7か所(1p、6q、9p、12q、16q、17p、18q)の染色体領域において高頻度(30%以上)の染色体欠失が認められた。これらの領域のうち、9pはMTS1、17pはp53、18qはDPC4が欠失の標的遺伝子と考えられる。われわれは、この3か所以外の領域のうち、特に12qを選び、マイクロサテライトマーカーをふやして、さらに詳細な欠失地図を作成したところ、約1cMの共通欠失領域を同定し得た。この領域は、既にYACクローンによりカバーしており、現在、YACクローンのDNAを用いてコスミドヘサブクローニングし、コンティグを作成する作業を進めている。また、この1cMの領域には既にマップされた興味深い遺伝子があるので、これを一つの候補遺伝子と考えて、膵癌における遺伝子異常の有無を検索している。
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