研究概要 |
(1)Tリンパ球が先天的に欠如したヌードラットに高脂血症を負荷した時に発生する大動脈病変について検討し,T細胞の欠如によりマクロファージの泡沫細胞化が促進されることを明らかにした.(2)ヒトの大動脈内膜に,免疫系における特殊化した抗原提示細胞である皮膚のLangerhans細胞と同様の超微形態を示す細胞(Vascular dendritic cell;VDC)が存在することを明らかにした.VDCはCDla.S-100に陽性で,細胞内にtubulovesicular systemがよく発達しており,Langerhans細胞に特有とされるBirbeck顆粒を有し,本顆粒物質に特異的とされるLag抗体に陽性である.VDCは硬化巣に集簇したT細胞やマクロファージと細胞突起により密に接触し,抗原提示細胞として機能している可能性が示唆される.(3)ラットモデルを使用し,高コレステロール血症下に発生する大動脈病変におけるICAM-I/LFA-1経路の役割について,特異的な巣クローン抗体投与による阻止実験を行うことにより検討を加え,少なくともラットモデルにおいて,これらの接着分子が初期の動脈硬化病変の形成に不可欠な"atheroELAM"として機能していることを明らかにした.(4)独自に開発した3次元立体培養装置を用いて内皮細胞を培養し,形態的並びに機能的分子を検討したところ,通常の培養内皮細胞と異なり,形態的にtight junctionやadherens junctionを形成し,これらの接着装置に関連した分子であるZO-1やαカテニンを発現していた.さらにエンドセリンを指標に分泌機能を調べたところ,内腔側に比し内膜側に約10倍の分泌極性を示すことが判明した.この分泌極性はnative LDLやoxidized LDLなどの動脈硬化惹起性リポ蛋白により修飾を受けた.
|