研究概要 |
本研究は動脈硬化を自然発症するapoE欠損マウスを用いて、内皮細胞上に発現する接着因子の発現動態を形態学的に検討することを目的としている。これは単球と内皮細胞の相互反応という動脈硬化の初期病変形成を理解するに当たって重要な意義を持つものと思われる。方法はin situ免疫法により光顕的、電顕的に観察する方法をとった。これはマウスの大動脈を潅流固定後、切り開いてスライドグラス上に貼り付けそのまま免疫染色を施すものであるが、この方法によって内皮細胞表面の広範な観察が可能になる。検索した接着因子はE-selectin,P-selectin,VCAM-1,ICAM-1,PECAM-1である。この結果VCAM-1とICAM-1の発現ならびに分布に興味深い知見が得られた。まずICAM-1は、大動脈弓部小弯側などのshear stressが弱いと思われるような部位に強く発現していた。これはapoE欠損マウスにも対照マウスにも同様に見られたことからICAM-1の発現には血流が関与している可能性が示唆された。またこのICAM-1が強く発現している部位は動脈硬化の好発部位であることは興味深い。電顕的には細胞の境界領域やmicrovilliに局在する傾向が見られた。一方、VCAM-1は動脈硬化の好発部位のいくつかの内皮細胞に発現していた。これはapoE欠損マウスのみに見られ、対照マウスには発現が見られなかったことからVCAM-1の発現には脂質が関与している可能性が示唆された。電顕的には細胞表面に全体的に発現していたが、下流域に強く発現する傾向が見られた。E-selectinとP-selectinの発現は見られず、またPECAM-1は電顕的には細胞境界領域に局在し、血流や脂質の影響を受けないように思われた。
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