研究概要 |
1.ヒトPit-1 isoform (Pit-1β, Pit-1T)に対するpolyclonal抗体を用いて、正常ヒト下垂体ならびに下垂体腺腫70例のホルマリン固定パラフィン切片において免疫組織化学(IHC)によりこれらの発現を検討したところ、正常下垂体ではPit-1βはGH細胞に一致し、Pit-1TはGH細胞とTSH細胞に特異性が高いことが確認された。腺腫において、Pit-1βはGH産生腺腫で全例に強く核内に染色性が認められ、一方Pit-1TはTSH産生腺腫で全例に強陽性を示した。またisoform特異的なoligonucleotide probeを合成しin situ hybridization (ISH)を行うと、Pit-1β, Pit-1TmRNAの発現はGH, TSH産生腺腫で全例で発現が見られた。以上の結果よりPit-1β, Pit-1TはそれぞれGH, TSHへの機能分化に強く関与していることが明らかにされた。 2.成長ホルモン放出因子受容体(GRFR),甲状腺ホルモン受容体(TR),エストロゲン受容体(ER) mRNAの正常ヒト下垂体、下垂体腺腫における発現をISH法を用いて解析した。GRFRmRNAはGH産生腺腫(15例)の全例で発現が見られた。またTRmRNAはGH産生腺腫15例、TSH産生腺腫6例で全例に発現がみられたが、PRL, ACTH,非機能性腺腫では発現はわずかであった。ERmRNAはPRL産生腺腫15例中13例に発現が見られ、Combined ISH-IHC法でPit-1との共存が確認され、両者の共同作用が示唆された。以上よりこれらの受容体が下垂体腺腫においても、Pit-1と共同して機能発現・転写活性に関与する事が示唆された。
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