研究課題/領域番号 |
07457056
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
桶田 理喜 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (70013977)
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研究分担者 |
松尾 崇 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (00165771)
黒岩 俊彦 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (80129832)
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キーワード | 高血圧 / <Binswanger>^^^<ビンスワンガー>脳症 / 大脳白質 / 血管性痴呆 / 1腎DOCA・食塩高血圧 / 大脳白質動脈 |
研究概要 |
研究目的:(1)Binswanger脳症(以下B脳症)では大脳白質動脈にどのような病変が生じているか、それは高血圧関連の病変と言えるか、そうだとすればそれは高血圧性脳出血例に於けるよりも高度であると言えるのかについて剖検例で検索すること、(2)大脳白質動脈の発達が見られる動物の内ネコに慢性高血圧を負荷した場合に脳動脈にはどの様な高血圧の影響が見られるかと言う点について調べること。 材料と方法:1.B脳症剖検例の大脳白質動脈の検索:この目的のために、40〜50歳台で発症し70歳までに死亡した、所謂"古典型"と言えるB脳症の剖検脳を6例集め高血圧性脳出血5例と比較した。2.ネコの慢性高血圧の脳と腎臓の動脈への影響に関する検索:体重3〜5Kgの雌雄の成熟ネコ11匹をone-kidney DOCA-salt hypertensionの状態にして、それを4ヵ月間持続して、脳動脈と腎動脈の中膜の厚さをElastica-Masson染色した組織標本を用いて組織計測した。 結果と考察:1.B脳症の大脳白質動脈病変:大脳白質動脈は主に皮質内から白質浅層の部でB脳症では高血圧性脳出血例よりも高度に傷害されており、その病変の性状は動脈中膜の平滑筋消失と粥状硬化症が主体であり、病変の性状の点では両疾患の間に差異は認められなかった。従って、両疾患では大脳白質動脈に高血圧に起因する動脈病変が生じているものの、B脳症ではそれが有意に高頻度に、そして恐らくは高度に生じており、その病変の中で中膜平滑筋消失が高頻度に認められた点から、大脳白質動脈の血流調節能はB脳症ではより高度に障害されていると判断された。大脳白質内の細動脈外膜の著しい線維化はこの血流調節機能低下によって高度な血圧負荷が大脳白質の細動脈に及んだ結果であると考えられ、この変化が白質の脱髄の原因であるとは考えられなかった。2.実験的慢性高血圧の腎動脈と脳動脈への影響:4ヵ月間のone kidney DOCA-salt hypertensionによる高血圧では血圧上昇が34.6mmHg以上の場合に腎動脈の小葉間動脈や輸入動脈の細い領域に中膜肥厚が生じるが、脳動脈ではそれは生じない事が分かった。脳動脈に認められた性状の変化として、segmentalに内膜の線維性肥厚が見られたのみであり、動脈壊死や中膜平滑筋の消失等は認められなかった。現在、12ヵ月間の慢性高血圧負荷を行って脳動脈への高血圧の影響について検索中である。
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