研究概要 |
本研究はpre-Bリンパ腫好発系マウスSL/khを出発点として、Tリンパ腫の病型の決定の宿主遺伝機構を明らかにすることを目的としている。本年度は次の研究を実施した。1.SLファミリーに属する4系統のマウス相互間と実験室マウスの遺伝的関係を詳細に解明し、リンパ腫の病因因子である内在性ウイルスEmv-11の起源を確定したこと、2.SL/khのリンパ腫に対する抵抗性遺伝子をSL/Niあるいは野性マウス由来近交系MSM/Msで発見しマップ位置を確定したこと、3.TIsm-1遺伝子の詳細なマッピングのためAKXD21,AKXD11の組み換え近交系間の退交配系を作成し観察中であること、4.Tlsm-1の候補遺伝子であるIL-4R,CD43,LFA-1遺の発現、構造異常の有無をRT-PCR,PCRproductのSSCP解析を行いつつあること、5.Tlsm-1の胸腺レベルでの作用を調べるため(SL/kh XAKR/Ms )F1を胸腺摘除し、腎被膜下にAKR/MsあるいはSL/khの新生児胸腺を移植し、リンパ腫の発生を観察しつつあること、6.リンパ腫感受性遺伝子Tlsm-1,Esl-1,foc-1についてcongenic strainの作成を行い,来年度中には退交配世代が10代を越え、固定できる見通しとなった。7.Tlsm-1のヒト相同遺伝子はヒト第16または第10染色体にあることが予想される。この同定のためヒトTリンパ腫、成人T細胞白血病のDNAを収集し解析に着手したこと、8.ラット化学発癌剤誘発Tリンパ腫の病型決定遺伝子Tls-1を詳細に検討するため、F344とLE/Stmの間で12系の組み換え近交系ラットを作成した。各系ラットにPNUを投与し、Tリンパ腫の発生を観察しつつある。
|