炎症の進展がヒトに類似したウサギを用い、炎症初期に産生される因子のネットワークを検討した。ウサギについてはこの問題を調べる道具が存在しないため、以前の研究で炎症初期の発現が判明しているmRNAの中から、TNFα、IL-8、IL-1raを選びanti-sense RNA、遺伝子組換体、抗体を開発した。これらに以前に開発したIL-1βの道具を加えて、ウサギ膝関節のLPS炎症について検討した。炎症9時間以内では上述の4種がすべて検出され、遺伝子差引ライブラリーに関する検索結果を裏付けたが、mRNA発現、ELISAによる詳細な検討で、最も早い時間帯のサイトカインはTNFαとIL-8であり、引き続くIL-1βとIL-1raの産生が判明した。各サイトカインの阻止効果から、サイトカイン相互間のネットワークを検討すると、TNFαの産生量はIL-8、IL-1βの阻止で変化しなかった。炎症2時間のIL-8の産生量はIL-1の阻止で影響を受けないが、TNFαの阻止では50%が抑制された。また、IL-1βの産生量はTNFαまたはIL-8の阻止で50%が抑制され、IL-1raによるIL-1の阻止で80%が抑制され、これらの組合わせでほとんどすべて抑制された。さらに、好中球枯渇ウサギについて検索するとTNFαおよび炎症2時間のIL-8の産生は影響を受けず、IL-1βの産生は消失した。すなわち、ウサギのLPS炎症で最初に産生されるのはTNFαであり、これと同時にIL-8の産生が起るが、その1部はTNFαの支配下にあり、一部は独立に産生される。IL-1の産生はTNFαおよびIL-8に支配され、炎症早期の好中球によって産生されていることが判明した。
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