間質細胞が関与する心筋細胞の異常興奮

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457064
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 高松 哲郎 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (40154900)
• キーワード: 不整脈 / 心筋細胞 / カルシウムイオン / 細胞間伝播 / レーザ顕微鏡

研究概要

ヒトの心臓死の原因として高い割合を占める不整脈、特に心室細動や粗動の原因となる期外収縮の細胞レベルにおける発生機序は不明である。本研究の目的は、虚血によって引き起こされる異常な細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]_i)の上昇が、心筋-心筋細胞間だけでなく、心筋-間質細胞間を伝播するのか、もし伝播するのであればいかに伝播するか、についてカルシウム波の伝播をモデルに解析することにある。
心室筋多細胞群の一つの細胞に発生したカルシウム波が、一つの光学的切片の中で隣り合つた細胞に伝播する様子をレーザ顕微鏡で捉えた。細胞間を通過する際にタイムラグは認められず、さらにギャップ結合を閉じる作用を持つエンフルレンを加えると、カルシウム波は細胞境界を越えて伝播できないが、洗い流すと再び細胞間を伝播したことから、細胞間の伝播はギャップ結合を通過したカルシウムイオンによって惹起されるCa^<2+>-induced Ca^<2+> release form sarcoplasmic reticulumであると考えられた。
次に、短時間に膜電位を変化させ拡張期の[Ca^<2+>]_iがカルシウム波に及ぼす影響についてレーザ顕微鏡のX-t走査を用いて観察した。その結果、拡張期[Ca^<2+>]_iの変化そのものが直接カルシウムトランジェントに影響を与えていることが分かった。つまり、心不全に陥った心臓では、異常な筋小胞体からのCa^<2+>放出も起こり易く、かつ周囲に広がりやすい状態となり重症な不整脈が発生しやすい環境を提供していると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Takahashi,A.and Takamatsu.T: "A new approach to study the reletionship between calcium waves and diastolic [Ca^<2+>]_i in heart muscle cells" Acta Histochem.Cytochm.In press
• [文献書誌] 安井 仁,高松 哲郎・吉村 了男,岡 隆宏: "虚血再灌流障害におけるラット毛細胆管の微細形態変化" 今日の移植. 9. 47-52 (1996)
• [文献書誌] Nosaka.T,Takamatsu.T,Fujita.,S.Hatanaka.M: "The post-transcriptional regulator Rex of the human T-Cell leukemia virus type I is present as nucleolar speckles in infected cells" Exp.Cell Res.219. 219-122 (1995)
• [文献書誌] Miyazaki.Y.,Takamatsu,t.,Fujita,S.,Hatanaka.M: "The cytotoxicity of human immunocleficiency virus type l:Imprications for its interaction with the uncleolar protein B23." Exp.Cell Res.219. 93-101 (1995)
• [文献書誌] Shiraishi.I.,Takamatsu.T.,Fujita.S.,: "Three-dimensional observation with a confocal scanning laser microscope of fibranectin immunolabeling during cardiac looping in the chick embryo" Anat.Embryol. 191. 183-189 (1995)
• [文献書誌] 高松 哲郎: "心筋細胞におけるカルシウムウェーブ" 医学のあゆみ. 176. 385-389 (1996)
• [文献書誌] 高松 哲郎: "組織細胞化学 1995" 日本組織細胞化学会編 学際企画, 7-15 (1995)
• [文献書誌] Siraishi.I.,Takamatsu.T.,Onouchi.Z.and Fujita,S.: "Developmental mechanisms of heart disease" Clark.E.B.,Markwald,R.R.and Takao,A.eds,Futura Publishing Co, 471-476 (1995)