研究概要 |
C型インフルエンザウイルスの自然界における遺伝子交雑の実態を把握する目的で解析を進めている。平成7年度の成績を以下に要約する。 1.1992年末以降山形と仙台の両市でミシシッピ-(MS)/80系統の抗原性をもつウイルスが9株たて続けに分離されたが、そのすべてが遺伝子交雑体と推定された。 2.そこで各分離株の遺伝子分節の由来の決定を試みた結果、山形/5/92、宮城/3/93、宮城/4/93の3株は同じ遺伝子組成をもち、HE,P3,NP,M遺伝子をMS/80株様ウイルスから、PB2,PB1,NS遺伝子をP/B/81株(1981年に中国のブタから分離されたC型ウイルス)様のウイルスから獲得したことが明らかになった。 3.残りの6株の一方の親がMS/80系統のウイルスであることはまちがいない。しかし他方の親は、これまでの我々のサーベイランスでは捕えられていなかった未知のウイルスと推定された。この親の探索は今後の重要な課題である。 4.2で述べた3株の一方の親がP/B/81様のウイルスであり、MS/80株ウイルスとの交雑が日本で起こったとすれば、P/B/81様のウイルスがわが国にも存在していたはずである。そこでP/B/81株と同じ抗原性をもつ山形/81系統分離株の遺伝子組成を調べた結果、1991〜92年に仙台市で分離された6株(宮城/3/91、宮城/6/91、宮城/9/91、宮城/1〜3/92)がP/B/81株に酷似したウイルスと判定された。さらにこれらのウイルスも、NPとPB2遺伝子を未同定の親から、その他の分節を山形/81様のウイルスから獲得した遺伝子交雑体と推定された。 5.以上の成績から、C型ウイルス間の遺伝子交雑は、想像を越えた頻度で自然界で起こっており、同ウイルスの生態に大きな影を落としている可能性が益々強くなったと考える。
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