宿主防御機構からの回避に関わるヘルペスウイルス遺伝子の機能

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457076
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 西山 幸廣 名古屋大学, 医学部, 教授 (60115615)
• 研究分担者: 五島 典 名古屋大学, 医学部, 助手 (70201499) ; 鶴見 達也 名古屋大学, 医学部, 助教授 (90172072)
• キーワード: 単純ヘルペスウイルス / ヒトサイトメガロウイルス / 宿主防御機構 / ウイルス遺伝子 / 病原性

研究概要

(1)US3遺伝子産物の機能を明らかにするために、HSV1型、HSV2型野性株、US3不活化ウイルス(L1BR1)をマウスの角膜、咀嚼筋、舌に接種し、CNSへの侵襲経路、CNS内での拡散について比較検討を行った。角膜接種において、野性株は三叉神経脊髄路核を始め延髄網様体、小脳まで侵襲が及ぶが、L1BR1では三叉神経脊髄路核に極めて限局した抗原分布を示した。咀嚼筋内接種においてはHSV野性株では三叉神経脊髄路核、中脳路核などにウイルス抗原を検出したが、L1BR1では検出できなかった。CNSでの増殖にUS3PKはさほど重要と思われないが、末梢からCNSへの侵襲には大きな役割を果していることが示唆された。
(2)US3欠損HSVを始めとする弱毒ウイルスの多くはマウス由来のマクロファージ系細胞であるRAW細胞において増殖が制限されていることが示された。
(3)リボヌクレオチド還元酵素欠損ウイルス(hrR3)の神経病原性に関し脳内接種系を用いて免疫組織化学的に検討した。生後8日目までのマウスでは脳室上衣、脳軟膜から大脳神経細胞へと感染が波及したが、4週令以降のマウスでは接種部位を除き神経細胞にウイルス抗原はほとんど検出されなかった。
(4)HCMV感染によるMHC classl分子の発現増強には不完全ウイルス粒子が関与していることが示唆された。また、gBのプロセシングに宿主蛋白質カルネキシンが関与していることを明らかにした。
(5)HSV US2,10及びUL3,4の単独発現系の作製をし、特異抗体を作った。

研究成果

• [文献書誌] Kobayashi,T.et al.: "Strong enhancement of HLA class I surface experssion by incomplete cytomegalovirus Particle : Analysis by dual-color flow cytometry" Transplantation Proceedings. 27. 966-969 (1995)
• [文献書誌] Daikoku,T.et al.: "The US3 protein pinase of herpes simplex virus type 2 is associated with phosplurylation of the UL12 alkaline nuclease in vitro." Archives of Virology. 140. 1637-1644 (1995)
• [文献書誌] Jiang,Y.-M.et al.: "Growth and cytopathogeviuty of herpes simplex vivo in a macrophage cell line,RAW264 : A good indicaton of intraperitoneal pathogeuiuy" Microbiology and Immunology. 39. 905-909 (1995)
• [文献書誌] 西山幸廣: "ヘルペスウイルス遺伝子の機能:増殖と病原性の分子的基盤" 現代医学. 43. 51-57 (1995)
• [文献書誌] Yamamoto,M.et.al.: "Immunahistochemical studies on the trans nasronal spread of vivelent herpes simplex vis type2 and its protein kinae mutast" Microbiology and Immunslogy. (印刷中). (1996)
• [文献書誌] Yamashita,Y.et al.: "Calnexin asts as ar imalecular chaperone during the folding of glycoprotein β of human cyto wegalovius" Journal of Virology. (印刷中). (1996)