研究概要 |
1)解析に使用するデングウイルス株の選定 (1)1993年度文部省科学研究費補助金により実施したタイ国東北部ナコン・パノムにおける国際学術研究で分離された2型デングウイルス(D2)4株と、(2)日本学術振興会論博事業によってタイ国バンコックで分離された4型デングウイルス(D4)2株を解析した。D2株のうち、ThNH7/93は最も重症のデングショック症候群(DSS)から、ThNH28/93はデング出血熱(DHF重篤度IIから、ThNH52/93はDHF重篤度Iから、ThNHp11/93は軽症のデング熱(DF)から分離された。D4株のうち、CT-129はDHF重篤度Iら、CT-77は軽症のDFから分離された。 2)塩基配列の解析 各ウイルス株をヒトスジシマカ培養細胞C6/36で増殖後、感染培養液からウイルスRNAを抽出し、PCR増幅し、大腸菌ベクターにクローニング後あるいはPCR産物を直接使用して、ダイデオキシ法により塩基配列を解析した。塩基配列から推測されるアミノ酸配列、及び標準株の配列との比較はコンピュータープログラムによって求めた。 3)結果 D2に関して、まず遺伝子のE/NS1接合部位240塩基解析したところ、4株はすべて遺伝子型IIに分類された。この部位では4株間にアミノ酸配列の相違は存在しなかったが、塩基配列の相違はDSS株とDF株間で6塩基、DSSとDHF株間では1塩基であったことから、変異の蓄積によってそのウイルス株に感染した患者の臨床症状が軽減されると推測された。次いで解析領域をC,PrM/M,E,NS1遺伝子に拡大した結果、PrM,NS1領域に株特異的なアミノ酸変異の存在が発見された。このことはDHFの発病機構に関係するウイルス毒力遺伝子の存在を示唆するものである。現在遺伝子残された領域について解析を進めている。D4に関してはE領域を解析したが株特異的なアミノ酸変異存在しなかったので、D2株間の相違が認められた部位を解析する予定である。
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