研究概要 |
1)ヒトロタウイルスの6種のすべての構造蛋白質(VP1,VP2,VP3,VP4,VP6,VP7)と5種の非構造蛋白質のうちの4種(NSP1,NSP2,NSP3,NSP4)のバキュロウイルス発現系による発現を終了した。現在、大量の発現蛋白(とくに、非構造蛋白)を精製している。His-Tagを付可した発現非構造蛋白質の精製方法を確立したことで、今後、非構造蛋白質の機能を検討できる基盤ができた。 2)VP2とVP6の共発現により、一重殻粒子の自己集合空粒子を得た。さらに、VP2,VP6およびVP7の共発現により、粒子表面の滑らかな二重殻粒子の自己集合空粒子を得た。さらに、VP2とともに、VP1,VP3,VP6,VP7,VP4と複数の構造蛋白を共発現することで、遺伝子(11本の2本鎖RNA)を含まない人工粒子を得た。この人工空粒子は、少なくともワクチンとしての利用価値を検討する上で重要である。さらに、人工空粒子内に、いかにして分節した遺伝子を保有させるかの検討を開始している。 3)発現VP7単独では、抗ビリオン抗体により認識されず、VP2,VP6,VP7の共発現で人工粒子となってはじめて認識されることを確認した。この結果は、VP7の抗原決定基がコンフォメ-ショナルであることを示す。さらに、人工粒子を利用したVP7の解析が可能となったことを示す。 4)これまで、ロタウイルスのマウス感染実験は、主として強い下痢誘発能を示すサルロタウイルスを利用して行われてきた。本研究では、多数の各G血清型を有するヒトロタウイルスを用いて乳のみマウスの経口感染実験を行った結果、G2を除きG1,G3,G4,G8,G12のヒトロタウイルスでも50%下痢誘発量は異なるものの下痢を誘発することを確認した。したがって、今後乳のみマウスを用いたヒトロタウイルスの感染防御実験が可能であることを示す。 5)ヒトロタウイルスの遺伝子の全塩基配列の決定とバキュロウイルス発現系による人工空粒子の調製はこれまでに報告がなく、ヒトロタウイルス感染とその防御を研究する上で重要かつ貴重な研究成果といえる。
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