研究概要 |
マウスの肝臓を門脈より37℃に加温したリン酸緩衝生理食塩水とコラゲナーゼ液により灌流した後、組織をほぐして得られる細胞より白血球分画を精製し、CD11c陽性細胞を樹状細胞とみなすと、その割合はおよそ1%程度と算定された。これらの細胞を種々の抗体と二重染色したところ、MHCクラスII抗原の発現が他の組織由来の培養樹状細胞に比べ微弱であることが示された。また、このMHCクラスII抗原の発現においても、中程度もののとほとんど陰性の2種の集団の存在が示された。そして、F4/80,Mac-1,FA11,CD14等マクロファージ同定の指標とされる種々の分子に関しては微量ではあるが検出された。一方、ICAM-1,B7-1,B7-2,VLA-4等の、細胞接着・共刺激分子の発現についても検討したが、これらのいずれの発現も非常に弱くしか認められなかった。これらの結果は、他の組織から調製される新鮮な樹状細胞と同様の表現型あるいはより未成熟な細胞が含まれる可能性を示唆している。脾樹状細胞に比べより未成熟と考えられるランゲルハンス細胞に貪食能が認められるとの報告を考慮し、ラッテクス粒子や特異抗体被覆ヒツジ赤血球を用いて貪食能の有無を検討してみたが、結果はネガティブであった。 ランゲルハンス細胞を代表例とし、脾樹状細胞なども培養することにより、MHCクラスII抗原のみならず種々の細胞接着・共刺激分子の発現量が著名に増加し、強力なT細胞活性化機能を獲得することが知られている。そこで、先の方法で調製した白血球画分の細胞を培養して、その表現型の変化を検討したが、これら分子の発現増加はそれほど顕著ではなかった。そこで、培養にGM-CSFを添加してみたが、大きな改善は認められなかった。この結果は、肝白血球分画に樹状細胞の成熟を抑制する細胞の存在を示唆するものかもしれない。
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