研究概要 |
LECラット(Long-Evans with a cinnamon-like coat color)は,北海道大学実験生物センターで非近交系LE(Long-Evans)ラットより体毛色の違いによって分離されたラットであり,生後約4ヶ月で肝炎を,その後慢性肝炎に移行したものはすべて肝癌を発症し死亡する。 LECラットの肝臓中に,銅すなわち銅メタロチオネインが異常に蓄積すること,劇症肝炎での死亡をまぬがれたLEDラットが肝癌を必発すること,ある種の銅メタロチオネインが,共同研究者,川西のDNA損傷(切断)実験で遺伝毒性が陽性と判断されたことより, LECラットの肝臓中に蓄積している銅メタロチオネインを分離・精製・純化し,その各成分についてDNA損傷(切断)実験を行い,どの成分が癌を引き起こすのかを調べ,LECラットにおける発癌機構の解明に役立てることを目的としている。 当該年度の研究計画として, (1)LECラットの肝臓から,銅メタロチオネインを,イソ蛋白質にまで,精製・分離・純化する。 (2)得られた銅メタロチオネインのすべてのイソ蛋白質について,蛋白質化学的性質を決定する。ことがあげられた。 そのため,ゲル濾過,イオン交換体による精製を試みた。しかし,銅メタロチオネインは,従来の一般的な精製方法では,精製途中で,空気中の酸素により酸化され,銅が遊離し,充分な量の試料を集めることは不可能であることが判明した。 そのため,精製方法を根本的に検討し直し,精製を酸素との接触を避け短期間で行える,HPLC(高速液体クロマトグラフイ-)を用いる方法を試みた。現在,この方法が有効である事が判明し,その最適条件を詳細に調べている。計画は,少しおくれたが,近くこの新方法で充分な試料が得られるものと考えられ,その後平成8年度の計画--DNA切断実験を行う予定である。
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