研究概要 |
【目的・方法】アデニル酸キナーゼ(AKl)はMgATP^<2->+AMP^<2->【double arrow】MgADP^<1->+ADP^<3->の反応を触媒する普遍的にどの細胞のサイトゾールにも存在する酵素である。われわれは、まずヒトアデニル酸キナーゼの生理活性に必須な残基の決定のために、ヒトAKcDNA(pAK,Kim et al.,1990)から、pMEX8-hAKlへとベクター改築を行った。次にX線回折やNMRによって想定された気質結合部位、あるいは、活性部位としての重要なアミノ酸残基(Lys9,Lys21,Lys27,Lys31,Lys194)に対し、ランダムに構成されるXXY codon(X:A,G,C,or,T,Y:Gor C)を挿入したプライマーを作製し、一本鎖pMEX8-hAKIDNAにannealingさせて行うEcksteinらの方法に基づきランダム部位特異的変異導入方法を確立した。 【結果】Lys残基の部位に関しては、K9L,K21P,K27L,K31F,K194Vなど17種類の変異種が得られた。ADP基質が生成される正反応におけるキネテックス解析の結果、それぞれの変異種のKm値は、両基質に関し0.02倍から23.4倍以上にまで上昇し、k_<cat>値は1/(100)以下に減少した。 【まとめ】このpMEX8ベクターとランナムプライマーを用いるランダム部位特異的変異導入法は、変異種を容易に短時間で作製することを可能にすることが明らかとなった。また、変異種解析の結果、これらLys残基は、MgATPとAMPの二つの基質間におけるリン酸転移反応においてリン酸との結合および触媒反応に重要な役割を果たしているであろうことが示唆された。ヒトアデニル酸キナーゼにおいて、これら重要なLys残基は本酵素の生理活性にとって必須な役割を有していて他のアミノ酸に置換できないことが推察された。さらに次年度、これら変異種におけるNMR検索を行って本酵素と基質との分子レベルでの相互作用を明らかにしたい。今後、細胞の分化及び脱分化さらにはアポプトーシスのプロセスに果たす本酵素の病態的な意義を追求する予定である。
|