研究概要 |
福岡県S村における検診(男:136、女:435)につき、X線、診察、身体計測、骨密度、臨床検査、生活習慣検査からなる総ての結果のデータベースを完成し、解析を進めている。平成8年度に得た特に興味ある解析結果を以下に示す。 骨粗鬆症と同様に年齢と共に増加する骨関節疾患として、変形性膝関節症と変形性脊椎症がある。 変形性膝関節症のX線所見別(正常/1度/2-4度)骨密度(g/cm^2)は、男子で0.716/0.697/0.727(P=0.395)、女子で0.572/0.513/0.493(P=0.000)であり、骨粗鬆症と同様に症度が高くなる程骨密度が低いという関係が示唆された。ところが年齢補正値は各々0.706/0.713/0.741(P=0.323),0.544/0.550/0.554(P=0.571)となり、有意ではないものの症度と骨密度は男女共正の相関を示す傾向にある。 変形性脊椎症のX線所見別(正常/異常)骨密度は、男子で0.709/0.714(P=0.773)、女子で0.553/0.531(P=0.033)、年齢補正値は各々0.698/0.719(P=0.170),0.537/0.568(P=0.000)となり、変形性膝関節症と同様に症度と骨密度は正の相関を示した。 前年度報告した如く、骨粗鬆症では男女共に症度が上がる程骨密度は低値を示し、年齢補正しても結果に変化はない。これらの比較より、骨粗鬆症はその発症において、変形性膝関節症や変形性脊椎症と全く逆の成因に基づいていると考えられる。即ち骨粗鬆症の一次予防は、変形性膝関節症や変形性脊椎症を増加させる可能性がある。 これらの知見に基づき、次年度は個々のリスク因子に関し詳細な解析を行う。
|