研究概要 |
地域における総合的健康管理を目標に和歌山県美山村と太地町にコホートを設定した。美山村と太地町は山間部農村と沿岸部漁村の特色がよく表れている。このように環境の異なる2地域の集団を対象に前向き(コホート)研究を実施することにより、骨粗鬆症発症にかかわる、山間部、沿岸部に特有な発症要因、あるいは両地域における共通の要因を究明することは意義深い。 コホートの設定方法は住民台帳に基づき40〜79歳の全住民を対象とした。これらの対象に「健康と生活習慣に関する質問調査」を実施した。項目は既往歴、家族歴、食生活習慣、嗜好、飲酒、喫煙、職歴、妊娠・出産歴など130項におよぶ。美山村では1,543人中1,369(88.7%)、太地町では2,261人中1,610人(71.2%)が回答した。 この質問票に回答した対象の中から40〜79歳の男女、年代別に各50人、計400人を無作為抽出し、骨密度を測定し、山間部と沿岸部の骨密度を比較した。山間部農村の場合、男性では40〜60歳にかけて加齢に伴い骨塩量が減少しているが、70歳代では60歳代に比べてかえって高くなっている。一方、沿岸部漁村では50歳代に比べて60歳代が高く、70歳代で再び低くなっており、男性では山村と漁村では加齢と骨塩量との関係が異なる結果が得られた。女性に関しては両地区とも加齢と骨密度の関連は認められた。また、いずれの年代でも、50歳代の男性を除けば沿岸部の住民の方が山間部の住民に比べて骨密度が高いことが示された。
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