環境の異なる2地域における骨粗鬆症発症要因に関する前向き(コホート)研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457111
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 和歌山県立医科大学
• 研究代表者: 橋本 勉 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70118454)
• 研究分担者: 森岡 聖次 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (70244754) ; 吉村 典子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60240355) ; 笠松 隆洋 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (20073695)
• キーワード: コホート研究 / 骨粗鬆症 / 骨密度 / 生活習慣 / 飲酒 / 喫煙 / fast bone loser

研究概要

地域における総合的健康管理を目標に、和歌山県年において、1988年山間部農村美山村に、1992年に紀伊半島太平洋沿岸に面する漁村、太地町にコホートを設定した。コホートの設定方法は住民台帳に基づき40〜79歳の全住民を対象に「健康と生活習慣に関する質問調査」を実施した。項目は既往歴、家族歴、食生活習慣、嗜好、飲酒、出産歴など約130項目に及ぶ。美山村では1543人中1369人(88.7%)、太地町では2261人中1610人(71.2%)が回答した。この質問調査に回答した対象の中から40〜79歳の男女各50人計400人を無作為に抽出し、骨密度を測定した。最初の骨密度調査は美山村では1990年にDXAを用い、太地町では1993年に車両搭載型のHologicQDR-1000を用いて行った。本年度は太地町で1996年6〜7月に第2回目の追跡調査を同機種の骨密度計を用いて実施した。美山村に関しては1997年1月より第3回目(第2回目は1993年1月に実施)の骨密度調査を現在行っており、3月末には完了する予定である。骨密度は男女とも両町村で年齢とともに低下している。ただし、男性では美山村は60歳代より70歳代の方が高かったが太地町では、50歳代より60歳代の方が高い。3年間の骨密度変化では平均値で美山村、太地町ともに50歳代女性のみで有意な低を示し、他の年齢層ではほとんど変化はみられない。次に、急激に骨量が減少し骨折を起こしやすくなるといわれるfast bone loserを骨密度1年間で3%以上減少する者と定義すると、その発生率は美山村では男性2.4%、女性9.7%、太地町では男性2.2%、女性6.9%と両地域とも女性は男性の3倍以上の割合で発生している。今後現在測定中の美山村の3回目の成績もあわせて解析する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 上田晃子 他: "骨密度に影響を及ぼす要因に関する検討" 日本公衆衛生雑誌. 43 (1). 50-61 (1996)
• [文献書誌] 笠松隆洋 他: "和歌山県下一漁村住民の骨密度調査(第1報)地域代表性のある集団での性・年齢別骨密度値" 日本衛生学雑誌. 50 (6). 1084-1092 (1996)
• [文献書誌] 橋本勉: "骨粗鬆症における疫学調査の方法" Osteoporosis Japan. 4 (1). 73-87 (1996)
• [文献書誌] 吉村典子 他: "環境の異なる2地域における骨代謝マーカー分布-山村と漁村の比較-" Osteoporosis Japan. 4 (2). 119-122 (1996)
• [文献書誌] 森岡聖次 他: "骨量の地域差-山村と漁村の比較-" CLINICAL CALCIUM. 6 (7). 29-33 (1996)
• [文献書誌] Yoshimura N. et al.: "Bone metabolic marker levels in residents of a rural community in Japan" Journal of Bone and Mineral Metabolism. 14. 39-42 (1996)
• [文献書誌] 吉村典子 他: "和歌山県下-漁村住民の骨密度調査(第2報)骨密度に影響を与える要因の分析" 日本衛生学雑誌. 51 (3). 677-684 (1996)
• [文献書誌] 橋本 勉: "骨代謝とQOL" 医薬ジャーナル社, 230 (1996)
• [文献書誌] 橋本 勉: "骨粗鬆症Q & A" 医薬ジャーナル社, 167 (1996)