研究分担者 |
石川 秀樹 大阪府立成人病センター, 研究所10部, 主査
佐藤 真一 大阪府立公衆衛生研究所, 労働衛生部, 技術吏員
小坂 博 大阪府立公衆衛生研究所, 労働衛生部, 主任研究員 (30250327)
赤阪 進 大阪府立公衆衛生研究所, 労働衛生部, 主任研究員 (10158719)
織田 肇 大阪府立公衆衛生研究所, 労働衛生部, 副所長兼部長 (00132845)
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研究概要 |
大腸がんの予防のためには食生活の改善が有効であるとされている。このため、大腸がんの発生要因を詳しく調べることが必要である。そこで、本研究では、都市住民を対象として、食生活の調査とともに大腸の粘膜細胞に直接作用する便の発がん性(変異原性)の調査を計画した。平成7年度には、便の変異原性を集団規模で調べるための便の前処理法、変異原抽出法などの検討を行なった。さらに、平成8年度は、生活環境が比較的類似した集団について、食品摂取ならびに身体状況(血圧測定、血液検査など)の調査を行うと共に便の変異原性をネズミチフス菌TA1535/pSK1002を用いるumu試験により調べた。その結果、S9(-)で21.9%、S9(+)で5.7%の者が変異原性陽性を示した。変異原性は40才代で高く、60才代で低い傾向に、また、便量の少ないものでは変異原性が強く、変異原性に便量を乗じた変異原性の総量は便量の多い方が高い傾向にあった。摂取食品・栄養と便の変異原性との関係は、卵、魚、乳、肉、海草、砂糖の摂取量と変異原性との間に相関関係をうかがわせる結果が得られたが(r=0.19〜0.14)、明確な相関関係を示した食品はなかった。また、菜食型、魚食型群ではS9(+)の変異原性は低いものの、S9(-)で高く、一方、肉食型群ではS9(+)で高く、S9(-)で低値を示した。肉と乳摂取の関係では、乳はS9(-)の変異原性の低下に寄与するものの、S9(+)の変異原性は高まった。黄緑色野菜、海草の摂取は目だった効果はみられなかった。各栄養素と変異原性との間には特別な関係は見いだせなかった。便の金属含有量と変異原性の間には、測定した8種類の金属(Ca,Cu,Fe,K,Mg,Mn,Na,Zn)のうち、Zn,Feが変異原性(S9(+))と正の、また、Naが負の相関関係を示した。以上の結果から、年齢と共に職の嗜好が変化し、特に高齢者では、肉など代謝活性化によ変異原性を示す食物の摂取が減少していること、便量の少ないものでは変異原の濃度がより高くなっていることなどが推測される。さらに、大腸ポリ-プを持った大腸がんハイリスクグループより試料を収集し、便の前処理を行った。ハイリスクグループについては、食事指導を行うと同時に試料の収集を行っている。
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