研究課題
大腸がんの予防のためには食生活の改善が有効であるとされている。そこで、本研究では、(1)都市住民を対象として食生活の調査および便の発がん性(変異原性)の調査を、また、これと平行して、(2)大腸がん高危険群を対象に食事によるがん予防法の検討を計画した。このうち、(1)については便の変異原性を集団規模で調べるための便の前処理法、変異原抽出法の検討後、生活環境が比較的類似した集団について食品摂取ならびに便の変異原性調査を行なった。本年度は前年度の調査の範囲を広げると共にデータの蓄積を行ない208人の健康な男女(年令;40-70才)の食生活と便の変異原性のデータを得た。便の水抽出物の変異原性はネズミチフス菌TA1535/pSK1002株と0-アセチル転移酵素高産生性株であるNM2009株を用いるumu試験により測定した。その結果、0.2g(乾燥重量)の便の抽出物から変異原性を検出する事ができた。便の変異原性は代謝活性化を行なわない場合に比べて、代謝活性化を行なった場合の方が低く、代謝活性化を行なわない場合には、21.9%が陽性反応(陰性対照値の2倍以上)を示したが、代謝活性化を行なった場合にはわずかに5.7%が陽性反応で、代謝活性化を行なった群の陽性反応率は代謝活性化を行なわなかった群の約1/4に過ぎなかった。NM2009株を使った実験でもほぼ同様な結果が得られた。人の便の変異原性は年令の高いグループ(60才以上)に比較して、低いグループ(50才以下)で高かった。摂取食品・栄養と便の変異原性との関係は、卵、魚、乳、砂糖、甘味料の摂取量と変異原性(S9(-))との間に正の(r=0.145〜0.182)、米の摂取量と変異原性(S9(+))との間に負の(r=-0.178)相関関係をうかがわせる結果が得られたが、明確な相関関係を示した食品はなかった。また、各栄養素の摂取量と変異原性との関係を調べた。その結果、ナトリウム、塩分、灰分、SDFの摂取量と変異原性(S9(-))との間に正の(r=0.169〜0.203)、摂取カロリー数と変異原性(S9(+))との間に負の(r=-0.157)相関関係をうかがわせる結果が得られたが、明確な相関関係を示したものはなかった。また、(2)については、平成7年度以降、大腸がん高危険群の確保を行なうと共に、食事指導開始前、1年後の便を収集した。さらに、大腸がん高危険群は大腸ポリ-プを切除後、食事指導を行ない経過に観察を行なっている。現在、試行開始後2〜3年目に入っており、引続き、食事指導開始後、2年目の便試料の収集、収集した試料の分析を行なっている。
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