受傷組織の細胞死に至る過程では、生体防御の観点から、壊死巣と健常組織との境界に位置する細胞がapoptosis(programmed cell death)に陥る可能性がある。従って、本研究ではapoptosisとnecrosis(accidental cell death)2つの異なった細胞死機構による損傷の細胞生物学的検討を行った。損傷組織の作製:我々が考案・作製したPID温度制御方式発熱装置の発熱体(T-type)を麻酔下に開腹されたラット肝に刺入し、50°C、5分加熱したのち閉腹、障害肝を経時的に摘出した。損傷肝の病理組織学的及び免疫組織学的検討:H-E染色での病理組織学的検討の結果、加熱処理3時間後に摘出した肝では、発熱体刺入部位の周囲に小出血及び好中球の遊走を伴う凝固壊死の所見が見られる。さらに、加熱処理から摘出までの時間を延長させるに伴い、凝固壊死巣の狭小化がみられ、3日後の摘出肝では、狭小化した壊死巣の周辺部に繊維芽球の出現を伴う肉芽形成の開始を認める。また、DNAのフラグメント化をアポプ・タグ(in situ apoptosis検出用キツト)用いる免疫組織学的検討の結果、加熱処理6時間後に摘出した肝では、凝固壊死巣周辺に多数のapoptosis染色陽性核を有する細胞の出現をみる。さらに、加熱処理から摘出までの時間を延長させるに伴い、apoptosis染色陽性核を有する細胞の数が減少し、2日後の摘出肝では、もはやapoptosis染色陽性核を有する細胞が認められなくなった。 損傷組織の生化学的検討:損傷肝上のアポトーシス陽性細胞群を正確に切り出すことは不可能であり、アポトーシス細胞のラベル化を含め、DNAラダーの正確な検出法を検討している。
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