研究概要 |
慢性疾患などで恒常的に薬剤を服用している人の毛髪から薬剤を検出することで,この毛髪の主の疾病の推定が可能であると言われている.そこで,毛髪から薬剤などの化学物質を正確に検出する方法の開発およびその結果の意義付けに関する研究を行っている.平成7年度(初年度)は,法医実務に応用可能な方法の開発に重点をおいて研究した. 1.喘息治療薬のテオフィリン(TP)の分析 血液・尿試料についてExtrelutカラムを使った抽出法を作製し,ミクロカラムLC/UV検出による定性定量、さらにFirt-FAB-MSによる確認する方法を作製していたので,その方法を毛髪の分析に検討した.試験的分析において,毛髪中には,TPがかなり微量しか移行せず,LC/UVでは検出されないことがわかった.しかし,Frit-FAB-MSにおいて,TPの特徴イオンを捕らえることができ,TPを服用した患者の毛髪と健常人の毛髪との間に相対的な濃度差を求めることができた. 2.広範囲薬物のスクリーニング分析 毛髪の処理は,アルカリにより分解し,有機溶媒で抽出というのが,一般的に行われているが,この方法では夾雑物が大量に含まれ,GCおよびGC/MSの分析結果の解析が困難であったため,毛髪を溶かさずに,塩酸メタノールに浸し,抽出することを検討したが,回収率が低いなどの問題を残している. 3.濫用薬物の分析 覚せい剤について,体組織からの簡素な迅速試料処理法をExtrelutカラムを使って開発した.この方法を毛髪に応用を検討した.毛髪は薄いアルカリで溶かした後,体組織と同様に簡素な処理で試料処理が可能になった.この処理により従来よりも微量の薬物の抽出が可能になったことに加え,フェノール系代謝物などの証明も可能にした.
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