研究概要 |
ラット血管内皮細胞をサイトカインで刺激して発現した誘導型NO合成酵素(iNOS)をPCRクローニングして得られたcDNAからその全構造を解明した。ラット内皮iNOSはマウスマクロファージiNOSと92%の相同性を示し、NOSに共通するNADPH,フラビン,カルモデュリン,ヘムの結合部位を有する。iN0Sの3'側非翻訳領域にはmRNAの非安定化に関わるモチーフが4カ所みられ、蛋白合成阻害薬によるsuperinductionに関与するものと推定される。iNOS cDNAを血管平滑筋細胞に強制発現させると、過剰なNO生成をもたらし、DNA合成抑制やアポトーシスが亢進した。したがって内皮でのiN0Sの役割はNOの細胞毒性作用を介した防御因子であると同時に、血管内皮の再構築に関与するアポトーシス誘導因子といえる。事実慢性関節リューマチの滑膜細胞や内皮細胞ではサイトカインによりiNOS遺伝子の著明な発現亢進がみられ、関節局所でのNO炎症反応への関与が示唆される。また細菌性毒素による全身性炎症反応の代表であるエンドトキシンショック犬モデルではiNOSは過剰発現しNOS阻害薬の投与により血圧は回復するものの、体血管抵抗の増加と心拍出量の低下をもたらし、血行動態と代謝の異常は是正されなかった。今後は選択的iNOS阻害薬の開発とその応用が望まれる。
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