(1)MBP特異的T cell lineの樹立:ルイスラットをミエリン塩基性蛋白(MBP)ペプチド(68-88)で免疫し、9日後に所属リンパ節よりリンパ節細胞を採取した。このリンパ節細胞を、MBPによる抗原刺激と、IL-2による刺激を交互に繰り返しながら培養することによって、MBP特異的T cell lineを樹立した。さらに、このT cell lineを同系マウスに移入して、実際に脳炎惹起性であること、すなわち生体内でも脳組織に特異性があることを確認した。 (2)サイトカインの遺伝子の発現ベクターの作成:ラットIL-4、ヒトIL-10、ヒトTGFbetaの各遺伝子をシグナル配列とともにレトロウイルスLTRプロモーターを持つベクターに組み込んだ。TGFbetaは通常潜在型として産生され、細胞外で活性化されるが、あらかじめ遺伝子の2カ所に点変異を挿入することによって常に活性型とすることが可能なことが知られているため、PCR法を利用してこの変異体も作製した。次に、これらのベクターをCos細胞にトランスフェクトし、その培養上清中に各サイトカインが発現することをELISA法にて確認した。さらに、各サイトカインを含む培養上清をMBP特異的T cell lineに添加したところ、変異型TGFbeta、酸処理TGFbetaはT細胞の増殖を強力に抑制した。 T cell lineへの遺伝子導入:サイトカインベクターのT cell lineへの遺伝子導入の予備的検討として、高力価のreporter gene発現ウイルスを用いて実験を行った。ecotropic envelope、amphotropic envelopeのどちらのレトロウイルスベクターも効率よくマウス3T3細胞に感染することを確認しているが、T cell lineへの感染効率は悪く、現在遺伝子導入方法について検討を重ねている。
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