慢性萎縮性胃炎は胃癌の発生母地の一つと考えられている。胃粘膜萎縮は、H.pylori感染や自己免疫機序で引き起こされることが知られているが、その発症、進展の機序は明らかではない。また、萎縮性胃炎患者には、高ガストリン血症が観察されることが知られている。 胃粘膜萎縮進展の機序を研究する目的で、私達は、最初に、高ガストリン血症モデルマウス作製を試みた。ガストリンの体内半減期は約8分と短い上、前駆体ぺプチドから限定切断とC端のアミド化を経て、生理活性型のガストリン17となる。従って、ガストリンの持続注入や、ガストリン遺伝子を導入してトランスジェニックマウストランスジェニックマウスを得る方法では、ヒト高ガストリン血症に相当するガストリンチ値を持続して得ることは困難であった。私達は、蛋白質前駆体限定分解酵素furinにより切断される部位を有する変異ガストリン遺伝子をβアクチンプロモーターの下流に配した遺伝子を作製し、この遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製することにより、高ガストリン血症モデルマウスを作製し、現在その解析を行っている。次に、萎縮性胃粘膜において壁細胞が消失することにより、胃腺全体の萎縮をきたす機序を詳細に研究するため、新たに高純度、高分化度培養壁細胞の作製を試みた。温度感受性SV40largeT抗原遺伝子を壁細胞特異的に導入する目的で、壁細胞に特異的に発現している、H/KATPaseβサブユニット遺伝子のプロモーター部をラットゲノム遺伝子より切り出し、このプロモーターの下流にSV40largeT抗原遺伝子を配したDNAを作製した。このDNAを導入したトランスジェニックマウスを得て、現在培養壁細胞のクローン化を試みている。
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