研究概要 |
申請者らは近年増加傾向にある肝細胞癌(HCC)の早期診断を目標に,血清複合型糖蛋白の癌化にともなう糖鎖変異に関与するα1-6フコース転移酵素(AFT)の精製とその遺伝子クローニングを継続している.本プロジェクトにおいては,一番の問題点として,AFTの再現性の良い活性測定法が無かったことがあげられ,その開発が必要と考えられた.そのため,今年度においては,主に,AFTの精製純化のために必要な活性測定についての詳細な検討を主に行っている.AFTのプロダクトであるレンズマメレクチン結合性画分の多いHCC症例,HepG2培養細胞系ならびにアルファフェトプロテイン(AFP)産生性腎細胞癌症例より得られた癌部組織,培養上清および血清より,AFTと同種のゴルジに存在する糖鎖転移酵素群の一つであるIII型Nアセチルグルコサミン転移酵素(GnT III)をマーカーエンザイムとしてAFT含有分画を得,AFT活性の再現性の良い方法を検討中である.すなわち,活性測定前に糖鎖を標識する事は,AFTの転移部位である還元末端側Nアセチルグルコサミンの立体構造上の変化をきたし,不適切と考えられるため,あらかじめ糖鎖結合部位を含むアミノ酸十数個よりなる糖ペプチドをAFP,トランスフェリンなどより精製しアクセプターとして活性測定を検討している.他方,癌組織中のGnT III表出については,RNAプローブのクローニングを終えノザンブロットを用いて、各種疾患について検討中である.
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