研究概要 |
申請者らは近年増加傾向にある肝細胞癌(HCC)の早期診断を目標に,申請者らが今までに明らかにしてきた血清複合型糖蛋白の癌化にともなうフコシル化に関与するα1-6フコース転移酵素(AFT)の測定,精製とその遺伝子クローニングを計画し実行してきた.本プロジェクトにおいては,一番の問題点として,AFTの再現性の良い活性測定法の開発が必要と考えられた.この点に関し,申請者らはヒト血清由来トランスフェリンの糖鎖よりプロナーゼ消化を用いAsn結合糖鎖を得,その構造に2アミノピリジンを含む活性エステルであるPNSNBを用い蛍光標識した.本物質を基質として,HCC組織ゴルジ分画のAFT活性を逆相系高速液体クロマトを用い定量的に測定することが可能となった.本活性測定計を用い,AFTのプロダクトであるレンズマメレクチン結合性画分の多いHCC症例,HepG2培養細胞系ならびにアルファフェトプロテイン産生性腎細胞癌症例より得られた癌部組織,培養上清および血清より各種クロマトを用い純化精製中に,Taniguchi N, Uozumi Nらによりporcine brainより同種の酵素の純化,クローニングが報告された(J Biol Chem 271 : 27810-7, 1996).その報告によると,アミノ酸575個よりなる蛋白でtype II transmembrane糖転移酵素と考えられ,C末端付近にcatalytic domainの存在が確認された.そのため,ヒト由来AFTとのホモロジーを考慮し,同部のプライマーを設定しHepG2培養細胞を材料としてPCRによるmRNAの検出を試みたところ,効率よく検出されたため,ヒトcDNAライブラリーより現在クローニングの作業を進行中である.
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