1.ヒト消化管腫瘍のうち胃ECLカルチノイド、胃内分泌細胞癌、大腸癌症例にガストリン受容体遺伝子の発現が認められたが、胃癌では全く認められなかった。 2.胃内分泌細胞癌株ECC10にガストリンを投与すると、容量反応性の増殖促進と共に、PI代謝回転の亢進、[Ca^<2+>]iの増加が見られた。さらにガストリンは本細胞でRas、MAPキナーゼの活性化、c-fos発現の増加を誘発した。 3.ガストリン受容体を発現しているECC10、LoVo細胞の核抽出物を用いて、DNAフットプリンティング法を行ったところ、ガストリン受容体遺伝子にはAP1サイトに加えて、GATA binding domainと、これらの細胞核中に、それに結合する蛋白質の存在が明らかとなった。 4.本domainはHK-ATPaseやヒスタミンH_2受容体にも存在する。そこでこれらを機能的に発現しているイヌ壁細胞の核抽出物xを用いて同様に検討したところ、壁細胞核抽出物もGATA binding domainに結合することが明らかとなった。 5.そこでクローニングされたGATA結合蛋白質のcDNAを用いてLoVo、ECC10細胞におけるGATA結合蛋白質の発現をみたところ両細胞とも強い発現が見られた。逆にガストリン受容体が発現していない癌細胞においてはGATA結合蛋白の発現は認められなかった。 6.以上より正常壁細胞のみならず癌細胞におけるガストリン受容体の発現にもGATA結合蛋白が重要な役割を果していると考えられた。
|