研究概要 |
a.抗LKM1抗体陽性症例は、我が国ではC型慢性肝炎の2.5%にみられた。これらはAIH IIbに属するが、各種臨床検査所見、HCV-genotype,HLAタイピングなどの検討から通常のC型慢性肝炎と大差ない。またAIH IIa症例は今回の調査では、大阪市大第三内科の1例で、本邦では極めてまれな疾患と思われた。 なお、抗LKM1抗体の対応抗原には、heterogeneityが明らかになった。 b.抗LKM1抗体陽性C型慢性肝炎の治療法について検討した。注目すべきはインターフェロン有効症例はいずれもEnomotoらの報告のようなC型肝炎ウイルス遺伝子NS5領域に変異の多い、いわゆる変異株をもっていることが明らかになった。従ってLKM1抗体陽性C型慢性肝炎も通常のC型慢性肝炎と同じように加療して良いことが判明した。 c.約500例の慢性肝疾患について抗SLA抗体、III型症例を検討したところ、AIH疾患の約6%に検出された。健康正常人ではいずれも陰性であり、抗SLA抗体は肝疾患とくにAIH特異性のある自己抗体と思われた。その陽性症例の臨床的特徴についてはANA陽性AIHと差はない。抗SLA抗体の対応抗原に関する検討から42〜52KD反応バンドを認め、これらはサイトケラチン8や18に相当するものと考えられた。しかしながら個々の症例でblot像が異なり、今後、対応抗原の解析が必要と思われた。 d.平滑筋抗体陽性症例つまりAIH IV型については、小児の症例ではしばしば陽性であるが、成人例は稀であった。これらの臨床的特徴については、症例数を増し検討する必要があろう。 結び 我が国ではAIH I型が主体であるが、まれにII,III,IV型が存在する。しかし、II、III型の他にもANA陰性のAIHが存在し、これら症例の早期診断と治療についても今後の研究が望まれる。
|