研究概要 |
自己免疫性肝炎における肝細胞障害機序について従来より肝細胞膜抗体の出現を基盤にした抗体依存性細胞介在性細胞障害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity,ADCC)が関与していると考えられてきた。しかし、われわれはラット肝類洞壁内皮細胞、ウシ頸動脈由来の血管内皮細胞を用いて自己免疫性肝炎では高率に血管内皮細胞を標的とする血管内皮細胞障害性の抗体が出現することを明らかにし、ADCCのみならず内皮細胞障害に基づく循環障害も肝細胞障害の発現に関わっている可能性を示した(Dig.Dis.Sci 40:1213-20,1995)。本年度はヒト血管内皮細胞に対する細胞障害性の抗体が存在するかどうかをヒト臍帯血管由来の内皮細胞(VEC)、ヒト肝類洞壁内皮細胞(SEC)を用いて検討した。被検血清は自己免疫性肝炎患者2人、健常者2人の血清(100倍、500倍希釈)である。VEC,SECをacidic FGF,ヘパリン存在下20%FCS添加CS-C培養液にて18時間前培養後、1型コラーゲンでコートした96穴プレートに分注、培養後、既報の方法に従い、内皮細胞抗体を検索した。SECを用いた場合、いずれの希釈度においても自己免疫性肝炎患者由来の血清とインキュベートした場合には健常者由来の血清とインキュベートした場合と比較してより多くのIgGの結合がみられた。内皮細胞障害作用については既報の如く、前培養後の培養の際に自己免疫性肝炎患者2人、健常者2人の血清よりプロテインAカラムを用いて精製したIgGを加え、剥離した内皮細胞を算定した。自己免疫性肝炎患者由来の血清IgGとインキュベートした場合には健常者由来の血清IgGとインキュベートした場合と比較して剥離細胞は多かった。
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