研究課題/領域番号 |
07457146
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 俊夫 信州大学, 医学部・附属病院, 講師 (80020775)
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研究分担者 |
吉村 一彦 信州大学, 医学部・加齡適応センター, 助教授 (70174985)
松沢 幸範 信州大学, 医学部・附属病院, 助手 (40219423)
久保 恵嗣 信州大学, 医学部, 講師 (80143965)
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キーワード | 最大酸素摂取量 / 最大換気量 / 高地 / 肺水腫 / エンドセリン / 低酸素 / 肺血流シンチグラム / 肺血管収縮反応 |
研究概要 |
1高地運動トレーニングと心肺機能 標高3,417mおよび4,300mの地域に居住する高地に適応しているチベット族とその地域に移住してきた漢族の小児(平均年齢14歳)の運動能力を検討した。安静時、両方の地点で、チベット族の肺活量および最大換気量は、漢族に比し、高値を示した。また、チベット族の最大酸素摂取量、心拍出量も高値であった。安静時および軽度の運動負荷時の酸素飽和度は有意差はなかったが、運動負荷が増加するにしたがって、酸素飽和度は、チベツト族は、高値を示した。これらの成績は、出生から小児までの高地環境への曝露期間によって酸素摂取能力および運動能力が異なることが示唆された。これらの研究結果より、高地の適応しているチベット族の最大運動量、酸素摂取量、有気的運動能が高値であることがしめされ、高地トレーニングの有効性を示唆する所見である。 2)低地居住者の高地での運動負荷と心肺機能 a)われわれは、すでに、高地肺水腫既住者では、低酸素吸入によって、肺動脈圧が健常対照群に比し、有意に上昇することを報告したが、その機序にEndothelin-1の関与の有無を検討した。高地肺水腫既住者に10%酸素を吸入させ、心エコーで、肺動脈圧を計測し、血漿中のEndothelin-1を測定した。肺動脈圧の上昇の程度とEndothelin-1濃度の変動の間に相関は認められず、肺動脈圧上昇とEndothelin-1との関連がないことが確かめられた。 b)Tc-MAA肺血流シンチグラフィにて低酸素負荷時の肺血流動態を検討した。室内気吸入下および10%酸素を5分間、吸入負荷し、肺血流分布の変動を、後画像を用いて上、中、下部に3等分し、上部/下部(U/L)比を算出し、評価した。肉眼的観察で、低酸素負荷時の上肺野への血流シフトが、既住者群17例中10例に、対照群12例中2例に認められた。低酸素負荷時のU/L比は、既住者群では、室内気吸入時に比し、かつ対照群の低酸素負荷時に比しても、有意に増加した。既住者では、低酸素性肺血管収縮反応がより亢進し、その結果、血流が上肺部にシフトしたと考えられた。 これらの研究結果は高地肺水種の機序解明に低酸素性肺血管収縮反応の亢進が重要な役割を果たしていることを示す貴重な所見である。
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