研究概要 |
[目的]肺胞を場とする肺組織傷害の終末像である肺気腫、肺線維症の発症に関わる肺胞II型上皮細胞(II型細胞)と各種サイトカインおよびメヂエーターとの関係を明らかにすることである。[研究結果]1)II型細胞の増殖活性に及ぼすサイトカインの役割:IL-1βは20ng/mlをピークに濃度依存性に3Hthymidine(3HThd)を増強した.他のサイトカインIL-1α,IL-2,IL-6,IL-8,TNFαおよびGM-CSF単独では3HThdの取り込みを抑制し、IL-1βの前処置はその取り込みを回復させた.このIL-1βによる3HThdの取り込みは抗IL-1β抗体、IL-1β受容体拮抗薬により抑制された.またII型細胞は自らIL-1βmRNAを発現し、蛋白レベルでもIL-1β産生分泌し、autocrine的に増殖を自己制御していることが明らかとなった.II型細胞は線維化に関わるbFGF,vEGFのmRNAも発現していた.2)ヒトびまん性肺傷害(DAD)におけるアポトーシスの誘導:DADの剖検肺より硝子膜早期と器質化期の2峰性にアポトーシスが観察された.このアポトーシスはp53非依存性にBAX、c-mycの過剰発現とICE,Cpp32(caspase1,3)の発現によるものと考えられた.またiNOS,peroxynitriteの発現も観察された.3)ラットLPS急性肺傷害モデルのアポトーシス誘導機構:LPS急性肺傷害モデルにおいて免疫組織化学的にII型細胞および肺胞マクロファージにiNOSの発現が見られ、TUNEL法によりアポトーシスは、主にII型細胞で見られ、aminoguanidineの同時投与によりアポトーシスが抑制された.NOやperoxynitriteなどのoxidantがアポトーシス誘導機構の上流で重要な役割を演じていると推測された.4)ビタミンE欠乏BLM投与実験肺気腫モデルにおけるMatrix Metallo Protease(MMP)の発現:BLM肺線維症モデルに比し肺気腫モデルでは免疫組織化学染色によるbFGFの発現が少なく、気腫化が進行し始める後半に免疫組織染色によりMMP-7が見られ、メッセージのレベルでも蛋白レベルでもMMP-7の発現が証明された.[今後の課題]気腫化については喫煙との関係で、線維化については環境汚染物質との関係での動物モデル実験とヒト剖検肺についての更なる検討が必要である.
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