研究概要 |
[目的]肺組織傷害に関わる肺胞II型上皮細胞(以下II型細胞)の役割を炎症性サイトカイン、各種メヂエーターとの関係で明らかにする。[結果]1)II型細胞の増殖と炎症性サイトカイン:IL-1βはラット肺分離II型細胞のDNAえの[^3H]Thymidineの取り込みを促進し、他の炎症性サイトカインIL-1α,IL-2,IL-6,TNF-αおよびGM-CSFはその取り込みを抑制した。抗IL-1β抗体、IL-1受容体の処理はIL-1βによる[^3H]Thymidineの取り込みを有意に抑制し,両者の同時処理はIL-1β非投与のコントロールより更に[^3H]Thymidineの取り込みを抑制した。このことは炎症に際して、多量に産生されるIL-1βがII型細胞の増殖活性を刺激して、肺胞傷害からの防御機構を担い、かつII型細胞が自らIL-1βを産生し、増殖を自己調節していることを示唆している。2)肺サーファクタントと肺傷害:人工サーファクタント(以下S-TA)は好中球の遊走、接着、O^-_2の産生および好中球エラスターゼ活性を抑制する。S-TAの経気管投与はラットによるブレオマイシン急性肺傷害を抑制した。3)肺胞における水分調節肺胞の水分調節にはII型細胞の表面に存在するNaチャネルによる肺胞腔からNaの汲み上げと基底膜側のNa,Kチャネルによる汲み出しによって調節されている。ATP-sensitive potassium channel opner(K_<ATP> channel opener)により、水分クリアランスは増強するが、K_<ATP>channel blockerおよびapical sodium uptake inhibitor(Amiloride)によって抑制された。[結論]II型細胞は、肺組織傷害時の防御、リモデリングおよび肺胞腔内水分調節に際し、炎症性サイトカインとの相互作用、自ら産生分泌するサーファクタントおよびNa,K ion channelを介し、中心的役割を演じている。
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