研究概要 |
日本人の早期発症型FADのうちAPPに原因遺伝子がないと考えられる11家系を対象として連鎖分析と連鎖不平衡の検討を行うと、D14S43からD14S77までの付近にAD3遺伝子が存在すると考えられた。この領域を含むYACクローン797d11(約900kb)から、効率よくSTSを単離するために、Representative Difference Analysis(RDA)法を採用した。具体的には、797d11をテスターとし、ドライバーは酵母とYACのベクターのみから由来するDNAとした。テスターからドライバーを引き算する方法である。Sau3Alライブラリーから、合計25種のSTSを単離した。決定した総塩基配列数は、9,429pbであった。25種のうち9種が、AluやLINEの反復配列を含んでいた。BgIIIライブラリーから、合計15種のSTSを単離した。決定した総塩基配列数は、6,203bpであった。15種のうち4種が、AluやLINEの反復配列を含んでいた。 最近、AD3座位から細胞膜を7回貫通する蛋白が早期発症型FADの原因遺伝子(S182)として同定された。本遺伝子の変異は、白人家系で20種以上報告されているが、日本人家系でも4家系で、4種の異なる変異が発見された。このことより、S182がFADの原因遺伝子であることは間違いないと考えられた。現在のところ、S182の機能は、受容体なのか、イオンチャンネルなのか不明である。今回、STSを単離した797d11のヒトゲノム部分は、0.9Mbであったが、残念ながら、S182そのものを含んでいなかった。しかし、RDA法で、約15.5kb(0.9Mbの1.7%)のゲノム部分の塩基配列を決定し、さらに40種のSTSを効率よく単離したことは意義がある。
|