研究概要 |
本邦の早期発症型家族性アルツハイマー病の10数家系を連鎖分析し、原因遺伝子が第14染色体長腕(14q24.3付近)に座位することを報告した。次にこの領域より単離されたpresenilin-1 (PS1)遺伝子変異の有無を日本人の家系で検索することにより、4家系において異なる4種の変異を見出した。一方、孤発性アルツハイマー病において、白人の報告と同様に、APOE遺伝子のE4ゲノタイプが危険因子であること、アポリポ蛋白C2遺伝子には関連が認められず、アポリポ蛋白C1遺伝子には関連が認められることを報告した。さらに、A4/βアミロイド前駆体遺伝子の変異の簡便なスクリーニングの系を確立し、孤発性アルツハイマー病ではこの遺伝子の変異が見られないことを報告した。 また、α1-アンチキモトリプシン(ACT)がA4/β蛋白の凝集を促進する効果を示しており、孤発性晩期発症型アルツハイマー病(LOSAD)において、ACTのA対立遺伝子が、ApoE4との相互作用により発症に寄与していることを示した。LOSADにおけるPS1遺伝子の第9イントロンの多型に関しては弱い関連が認められた。したがって、PS1遺伝子はApoE4と独立したSDATの発症感受性遺伝子であることが示唆された。 白人のアルツハイマー病患者で発見されたミトコンドリア遺伝子バリアントNADH dehydrogenase (ND1,ND2,ND5), 12SrRNA, 16SrRNA, tRNA (Gln)等について日本人のアルツハイマー病患者における頻度を調べた。これらの結果から、ND2と12SrRNAのバリアントがアルツハイマー病の発症に関連している可能性があると考えられた。以上のようにアルツハイマー病全般の発症遺伝子に関して、多くの研究成果があった。
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