研究概要 |
我々は以前から本態性高血圧の成因とくに食塩との関連に注目し、食塩により血圧が上昇する機序の解明に取り組んでいる。主に腎臓でのNa排泄の調節におけるNa+, K+-ATPase活性の調節因子としてのウアバイン様物質を追究し、種々の高血圧モデルにおけるその病態生理的役割についての情報を報告してきた。最近このウアバイン様物質が中枢神経に存在し、末梢交感神経活性の調節において重要な役割を果すことが明らかにされてきていることを考慮し、今回ストレス負荷時のウアバイン様物質の変化を検討した。ストレスが本態性高血圧においても大きな役割を有することは否定できない事実である。ラットに10分水泳ストレス負荷を行い、終了10、40、70分後に血液とともに、視床下部、下垂体、副腎を採取しウアバイン様物質濃度を既知のストレス・ホルモンとともに測定した。予想されるコルチコステロン、カテコールアミンの上昇は10分後に明らかであり、この時期に一致して副腎ウアバイン様物質の増加を認めた。血液では40分後にウアバイン様物質が増加した。また副腎ウアバイン様物質と血中エピネフリン濃度には相関関係がみられた。なお中枢神経ではウアバイン様物質濃度の変化は観察できなかった。この結果からウアバイン様物質も一種のストレス・ホルモンとして機能している可能性が示された。現在、動物実験の成績を発展させるべく高血圧患者を対象としてトレッドミル負荷試験の前後で同様の検討を進めている。
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