ミオシン結合型プロテインホスファターゼ(MBP)の活性調節に関与すると考えられるPhoキナーゼの作用を、血管スキンドファイバーを用いて検討した。リコンビナントPhoキナーゼ(CAT)は、トライトンX-100処理のよるウサギ門脈スキンドファイバーを、CAT濃度依存性に収縮させた。CATによるこの収縮はミオシン軽鎖(MLC)のリン酸化を伴っているものの、Ca^<2+>非依存性で、MLCキナーゼ阻害剤ウオルトマンニンで阻害されなかった。このCATによる血管収縮は、Phoキナーゼの直接のMLCリン酸化およびMBPの阻害によるものと考えられ、Phoキナーゼが血管トーヌス制御に関与する重要な分子であることが証明された。 ヒトのMBPのミオシン結合サブユニット(MBS)のアミノ酸一次構造解析を行った。ヒトMBSは1033個のアミノ酸残基からなる分子量115kDaの蛋白質で、ラットおよびニワトリのMBSとそれぞれ89%および83%の相同性を有していた。その構造の特徴として、N端側にはアンキリンリピート構造が、C端にはロイシンジッパー構造が認められた。MBSは種差を越えてそのアミノ酸一次構造が高度に保存されていることが明らかになり、ヒトにおいてもミオシンホスファターゼ活性を発現させるために重要な構造を有していた。 REF52細胞ならびにMDCK細胞におけるMBSの細胞内局在を、MBSに対する抗体を用いて組織免疫染色法を用いて検討した。MBSは、両細胞においてストレスファイバー上に局在が認められ、MBPがミオシン結合能を有する結果と一致した。さらに、MDCK細胞においては、細胞接着の際にMBSは細胞質より細胞間接着部位にトランスロケ-トし、MBPが細胞接着にも関与していることが疑われた。
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