ミオシンホスファターゼ調節サブユニット(Mvosin Phosphatase Target Subunit;NYPT)の細胞内局在を検討したところ、MYPTはストレスファイバー上だけでなく細胞膜にも存在することが明らかとなってきたため、MYPTと細胞膜構成成分であるリン脂質との相互作用をin vitroにて検討した。MYPTはホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール等の酸性リン脂質とのみ詰合し、その結合部位はMYPTのC端側に存在すると考えられた。またこのMYPTとリン脂質との結合はAキナーゼにより影響を受けることから、MYPTのリン酸化がその細胞内局在を決定するひとつの因子である可能性が示唆された。 ヒトMYPTのクローニング中に、平滑筋に発現されている従来のMYPT(MYPT1)とは異なるアイソフォームの存在が疑われたので、この新規アイソフォーム(MYPT2)のクローニング、組織発現ならびにその遺伝子座の解析を行った。MYPT2は982個のアミノ酸残基よりなる分子量110.4KDの蛋白質で、N端側にアンキリンリピート構造とC端側にロイシンジッパー構造を有しており、ヒトMYPT1とのアミノ酸の相同性は52%であった。Western blotおよびNorthern blot法により発現組織の検討を行ったところ、MYPT2は心筋と脳に特異的に発現しており、またその染色体座はFISH法により1q32.1と考えられ、ヒトMYPT1(12q15-21.2)とは異なる遺伝子により発現されていることが明らかとなった。1q32.1の領域には家族性拡張型および肥大型心筋症の原因と考えられる遺伝子が存在することより、MYPT2と心筋症および心肥大との関連が示唆された。
|