研究概要 |
ミオシン結合型プロテインホスファターゼ(MP)の心血管系における機能ならびに各種病態との関連を以下の項目を中心に検討した。 1.平滑筋トーヌス調節におけるシグナル伝達機構の解析 MPの130kDa調節サブユニット(MYPT)はGTP依存性に低分子量G蛋白質RhoAと結合し,さらにRhoによって活性化される新規キナーゼ(Rhoキナーゼ)によりリン酸化され,ホスファタ-ザ活性が低下することが明らかとなった。またリコンビナントRhoキナーゼを用いた血管スキンドファイバーでの実験より、RhoキナーゼはMYPTだけでなくミオシン軽鎖をもリン酸化させることにより、濃度依存性に血管を収縮させることが明らかとなった。以上よりMP、Rhoキナーゼが血管トーヌス制御に重要な機能を有していると考えられた。 2.ヒトMP調節サブユニット(MYPT)の同定・性状解析 ヒト肺および脳cDNAライブラリーより2種類のMYPTアイソフォームを同定した(MYPT1,2)。ヒトMYPT1は従来のラット・ニワトリアイソフォームと相同性が高く(80%以上)、平滑筋組織に主に発現していた。一方、MYPT2はMYPT1との相同性は低く、心筋および脳に特異的に発現していた。MYPT1の染色体座は12q15-21.2、MYPT2は1q32.1とそれぞれ異なる遺伝子によって発現されていることが明らかとなった。MYPT2の遺伝子領域には心筋症の原因遺伝子が存在していることから、本分子とこれら病態との関連が示唆された。 3.MPの局在とリン脂質との関連 MPはストレスファイバー上だけでなく、細胞膜にも存在することが明らかとなってきたため、MYPTと細胞膜構成成分であるリン脂質との相互作用を検討したところ、MYPTのC端側と酸性リン脂質が結合することが明らかとなった.またこの結合はAキナーゼにより影響をうけることが明らかとなった。
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