心肥大形成の分子生物学的理解を得るために、3種類のアプローチを行った。 1.組織レニン・アンジオテンシン系と心肥大。 心臓に於いては、心臓で発現しているアンジオテンシン変換酵素の発現量が、局所で生成されるアンジオテンシンIIに大きく影響を及ぼす事を示した。マクロファージがレニンを産生することを証明したが、組織へのレニンの供給はマクロファージが担っている可能性を示した。高血圧自然発症ラット(SHR)は、Wistar-Kyotoラット(WKY)に比べると、副腎、中枢神経、マクロファージでのレニン発現が高く、これはレニン遺伝子により遺伝的に決定されている事を証明した。この事がSHRの心肥大等表現型に影響を及ぼしているのかをF2ラットを作成して調べたが、心肥大には影響がなく、唯一、末梢アルドステロン値に影響を及ぼす事が判明した。 2. differential screening法による心肥大に関与しうる遺伝子群の同定。 tissue type-II transglutaminaseが心肥大形成時に発現が増大することが見い出された。この酵素は、latent TGF-betaの活性化に関与し、レチノイドにより誘導される事も知られている。 3. SHRとWKYより作成したF2ラットを用いて、心重量に影響を及ぼす遺伝子座位を見い出す。 染色体1、2、8に心重量に影響を及ぼす座位を見い出したが、2及び8の座位は血圧上昇を通しての影響であった。1は、腎機能に影響を持つ座位であった(投稿準備中)。
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