研究概要 |
本研究はアンチセンス法を用いることにより動脈硬化症の遺伝子治療法を開発することを目的として行われ、申請した2年間で研究をほぼ終了することができた。本研究により明らかにされたことを以下にまとめる。 1)動脈硬化誘因物質(酸化LDL、リゾPC、糖化蛋白、トロンビン)は血管平滑筋細胞(SMC)膜上のトロンビン受容体(TR)の発現を誘導し転写因子NF-κBの活性化を通じてSMCの異常増殖を誘導することを見いだした。 2)NF-κB p65m RNAのAUG codonを標的にしたアンチセンス核酸を合成し、SMCに導入した。その結果、ゲルシフトアッセイにてトロンビン刺激によるNF-κBの活性化を80%抑制し、IL-6,GM-CSF,c-mycのmRNA発現を50%低下させ、さらにトロンビン刺激によるSMCの異常増殖も有意に抑えられることを認めた。 3)アンチセンスNF-κBのLPS投与によるエンドトキシンショックマウスにおける効果を検討した。アンチセンス投与群は死亡率が30%以下に低下させた。本アンチセンス投与により血清中のIL-6、肝臓、腎臓、肺におけるTNF-α,IL-6発現が有意に抑制できた。 4)アンチセンス核酸を人工血管に導入するために、その素材の検討を行った。AAm膜は細胞接着を阻害し、AAc膜は細胞を凝集させ素材による細胞増殖の違いを認めた。 以上、本研究により転写因子NF-κBに対するアンチセンスオリゴは血管系細胞にin vitroのみならずin vitroにおいても有効に働くことが示された。本オリゴを人工血管や冠動脈血管のグラフトに導入することで動脈硬化進展を予防しかつ心筋梗塞再発を抑制の可能性が示された。
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