研究概要 |
高血圧、高脂血症、糖尿病及び自然発症高血圧ラット(SHR)ではNO産生は減少する。私共は抗NOS抗体を用いてヒト高血圧、糖尿病及びSHRの血管を検討したが、NOSの発現は減少しておらず、NOの産生調節の機構はまだ明かではない。最近cAMPやshear stressが内皮細胞NO産生を増加することが明らかにされた。私共は、内皮細胞がcAMP(Circ.Res,1990)及びアデノシンA1受容体(BBRC1994)で駆動されるCl^-チャンネルを有し、volume調節を行うことを見出した。β受容体とアデノシンA1受容体は、腎尿細管や、神経細胞、マクロファージにも認められていることより本研究では内皮細胞とともに腎尿細管、神経細胞及びCa^<2+>非依存性のNOSを有するマクロファージにおけるCl^-チャンネルによるNO産生調節とCl^-チャンネルの分子機構を明らかにする。 今年度は、内皮細胞におけるCl^-チャンネルのNO調節機構について検討した。(1)内皮細胞のCl^-チャンネルは、whole-cell patch-clampやCl^-イオン蛍光指示薬SPQの単一細胞内濃度測定(Argus100CA)からcAMPやforskolinによるprotein kinase A(PKA)の活性化及びstaurosporineやH7によるprotein kinase C(PKC)の阻害が、部分的にCl^-チャンネルを抑制することで、過分極を来たし、このためCl^-effluxの増加とともに細胞内Ca^<2+>の上昇をきたし、NOを産生する機構が認められた。また、(2)私共はSHRより分離培養した内皮細胞でホスホリパーゼC-IP_3産生及びCa^<2+>濃度の上昇は亢進しているものの、PGI_2生産が逆に1/3に減少することを見出した。SHR内皮細胞におけるNO産生減少との関係が示唆され、Cl^-チャンネル-Ca^<2+>チャンネルによる内皮細胞NO生産の調節機構が関与することを示唆される。
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