マンノース結合蛋白(mannose binding protein;MBP)の補体活性化はこの分子に特有のセリンプロテアーゼであるMASP(MBP・associated serine protease)が関わることが最近発見された.一方、我々はプロテアーゼ阻害作用のあるα2マクログロブリン(α2M)がMBPに結合することを見いだしたことから、これがMBPの補体活性化の制御因子の可能性が示唆された.本研究は、MBPの補体活性化分子MASPの制御因子の固定、解析を行った. [方法] 1)ヒト新鮮血清から種々のクロマトグラフィを利用し、MBP、MASPおよびα2Mをそれぞれ精製した.一方、精製行程にCaイオンを存在させ、MBP/MASP複合体およびMBP/MASP/α2M複合体を得た. 2)MBP、MASPおよびα2Mの抗血清を作製(MASP.α2Mの抗体は既存)し、それぞれの測定系(ELISA)を開発した. [結果] 1)MBP、MASPおよびα2Mの複合体の存在をELISAの組み合わせで確認した.結合順はMBP・MASP・α2Mで、MBP・MASP間はCa依存性の可逆的結合、MASP・α2M間はcovalent結合が予測された. 2)MASPのプロテアーゼ活性はMBP・MASP・α2M複合体には存在せず、一方、α2Mを精製MASPに加えるとその活性が抑制されたことから、血液中ではα2MがMBP・MASP複合体の補体活性化を制御しているものと推測した. [考察] 系統発生的に古い補体系であるMBP補体活性化経路(レクチン経路)が高等動物に人に存在することは、抗体を介した特異的な生体防御機構を補佐する機構として残存したものと考えられる.実際、この経路の異常であるMBP欠損症は易感染性を示すことから、未だ生体にとって重要な感染防御機構として作用している事は明らかである.この経路の制御因子として、系統発生的に古い血清蛋白であるα2Mが同定されたことは、生体防御の発生の点で興味深い.
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