研究概要 |
1.レトロウイルスペクターMFG-SにX連鎖性慢性肉芽腫症(X-CGD)の原因遺伝子であるgp91 phox cDNAを組み込み、gp91 phox発現プラスミドMFG-S-91を構築し、これをパッケージング細胞ΨCRIPにネオマイシン耐性遺伝子発現プラスミドpSV2-neoと共にトランスフェクションし、プロデューサー細胞株に樹立した。NIH3T3細胞を標的としてタイトレーションを行い、細胞あたり約0.5コピーの高力価細胞株を以下の実験に用いた。X-CGD患児より樹立したEBV感染B細胞株6株を上記プロデューサー細胞株のウイルス上清と共に、32℃、5%CO2、24時間、2回繰り返し培養した後、5日から7日の後培養を行い化学発光を用いた系にて活性酸素能生能を測定した。その結果、1株(LCL-CGD3)においては正常細胞株の約20%の活性酸素能を示し、この方法によってCGD細胞の機能的再構築が可能であることが証明された。 2.X-CGDを含めて血液細胞の異常に起因する疾患の遺伝子治療の効果を恒久的に持続させるためには、造血幹細胞への遺伝子導入が必須であると考えられる。このためにはまず、ヒト臍帯血CD34陽性細胞と、現在遺伝子治療に用いてられているLASNベクターを用いて、その導入効率を検討した。導入に際し、ヒトリコンビナントフィブロネクチン分画(CH296)を被膜化し、サイトカインとしてIL3, IL6, SCFを加えた。導入効率の算定には、コロニーアッセイ(CFU-GM、HPP-CFC)及び半定量的PCR法を用いた。その結果、CH296存在下で、CFU-GM, HPP-CFC,半定量的PCR法いずれの場合においても導入効率の有意な上昇を認めたことから、CH296が血液幹細胞への遺伝子導入効率の改善に有用であることが示唆された。
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