研究概要 |
1.IDDMとHLA遺伝子 前年に続き、HLA抗原遺伝子と発症の関係を研究した。DQα鎖遺伝子、DQβ鎖遺伝子解析に続き、今年度はDRβ鎖遺伝子の解析を行った。IDDMではDRB11501が有意に低く、0405(S)、0901(V)が有意に増加していた。 何れも非Aspであり、白人の発症を規定しているDQβ鎖遺伝子と同じ遺伝子型がDRβ鎖遺伝子に見られた。この結果、日本人IDDM発症感受性を規定している遺伝子型はDQA1(R),DQB1(D),DRB1(nD)のhomozygotesの発症危険率が7.36と最も高いことが明らかになった。以上の結果より、日本人ではDRβ鎖遺伝子がより発症に関わっていることが示唆された。 2.小児期発症IDDM,NIDDMのミトコンドリア遺伝子異常 昨年は小児糖尿病患児のミトコンドリア遺伝子異常3243A-G,3316G-A,3394T-C変異について解析した。今年は更に、aldehyde Dehydrogenase 2 gene,NAD(P)H:oxidoreductase(NQ01,DT diaphorase)について検討した。DT diaphoraseはミトコンドリアの抗酸化作用を有する重要な酵素で、IDDMでは有意に変異アリルの頻度が高く、609C-T遺伝子多型のホモ接合体の頻度が低値であった。この事は、IDDM発症における膵β細胞の抗酸化作用が低下し、膵β細胞障害を起こしやすくしている可能性が考えられた。今後、更にその意義について検討する必要がある。 3.IDDM発症時の自己抗体・CoxBウイルスの同定 IDDMの発症時の血清ICA、GAD、抗インスリン抗体、最も新しいICA512(IA-2)について検討した。38例の発症間近な症例に於いて20例(52.6%)が陽性であった。また発症時の血清よりCoxBウイルスをRT-PCR法にて同定を試みたが、今の所陽性者は見つかっていない。 4.小児期発症インスリン依存性糖尿病児の長期予後に関する研究 1973-1992年に北海道で発症した450例の長期予後について調査した。
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