研究概要 |
われわれは,既に、性染色体異常症患者の遺伝子型-表現型解析に基づいて,擬常染色体領域の成長決定遺伝子をDXYS20-DXYS15の約650kbの領域に,また,Y特異的領域の成長決定遺伝子をY長腕近位部のDYS11-DYS246の約1Mbの領域に限局した。本年度は,擬常染色体領域の成長決定遺伝子のクローニングを主たる目標として,さらなる遺伝子型-表現型解析,および,成長決定遺伝子領域をカバーするYACとcosmid解析を開始した。 〈遺伝子型-表現型解析〉擬常染色体領域の部分欠失を有する15例を集積し,身長と遺伝子型の関連を検討した。各症例の身長は,正常集団および両親身長との比較により評価した。擬常染色体領域の遺伝子型は,RFLPもしくはdosage blottingを用いて,計16個の異なる座位に対して決定した。その結果、擬常染色体領域遠位部のDXYS60-DXYS15の約350kb領域のモノソミ-を有する患者7例は有意の低身長を伴っていたが,同領域がダイソミ-で存在する患者8例は正常ないし境界身長であった。 〈成長決定遺伝子領域の解析〉ハイデルベルグ大学のグループと共同で,擬常染色体領域のテロメアからDXYS15を含む領域の人工酵母染色体とコスミドを解析した。古典的座位およびコスミド末端に対応する新しい座位のスクリーニングにより、上記成長決定遺伝子領域をカバーする,6個の人工酵母染色体および26個のコスミドコンティグが作製された。 今回の成績から,成長決定遺伝子領域はDXYS60-DXYS15の約350kb領域に限局され,同領域をカバーするコスミドコンティグが初めて作製された。この結果,cDNA selectionおよびexon trapping等によるポジシナルクローニング開始の条件が整備された。
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